なにわの社労士べーやんの徒然日記

大手社労士事務所で修行中のべーやんが、日々の仕事や労働法に関するお役立ち情報、趣味などに関することを徒然なるままに綴ります

内定取り消しはできるのか

皆さんこんにちは、なにわの社労士べーやんです。

 

今週の水曜日は4月1日、新入社員の入社の時期ですね。

今年もたくさんの方が新しく社会人の一歩を踏み出しますね。

 

そのような時期ではありますが、今年は昨年までと少し変わり、

新型コロナウイルス感染症の影響により一部の企業で、今年4月入社の

新入社員の内定取り消しなどが出てきています。

 

今回はこの新入社員の内定取り消しについてお話しさせて頂きます。

内定取り消しはできるのか。

 結論からいうとできます。ただし、相当の事情が必要となります。

なぜかといいますと、内定者については「始期付解約権留保付雇用契約

すでに成立しているからです。

始期付解約権留保付雇用契約とは

 これは簡単な言葉で説明しますと特別な事情がなければ何月何日から勤務が始まる

雇用契約が結ばれています。

 

そして、特別な事情があれば、この雇用契約を解約することができます。

(=解約権留保付)

 

よって、内定者については、入社はしていませんが、その地位は特別な

事情がなければ、すでに入社している労働者と違わないという解釈になります。

特別な事情(解約権留保)とは

例えば以下のような場合が考えられます。

●卒業予定であった学校を卒業できない場合

●内定者が犯罪行為を犯した場合

●内定後、勤務に耐えることができないほどの健康状態となった場合

●採用選考時に、重大な虚偽申告があった時

●採用内定通知、誓約書等に記載されている内定取消事由がある場合

●規模の縮小等、経営上の重大な事情がある場合

 上記の事情が発覚した場合に、企業は内定者に対し解約権の行使

(内定取り消し)をすることができます。

企業の事情で内定取り消しをする場合

 「経営上の重大な事情がある場合」は内定取り消しができると上記に

記載しましたが、この事由で内定取り消しをする場合は、実はかなり

困難です。

 

企業は、労働者を経営上の事情で解雇する場合は、その解雇を避けるために、

あらゆる策を講じる必要があります。

 

そして、あらゆる策を講じても、改善されずにこのままだと労働者を解雇

しなければ経営が成り立たないという状況になってから、労働者を

解雇しなければいけません。

 

よって、例え経営が苦しいとはいえ、他の何の策も講じずにただ労働者を解雇

した場合、争いごとになれば、その解雇は不当であり、無効だということにも

なりえます。

 

そして、この解雇のお話は採用内定者についても同じです。

 

まだ入社はしていない内定者ですが、彼らには上記で説明した

「始期付解約権留保付雇用契約」が成立しているからです。

 

なので、企業の事情が少し変わったからといって、それだけの理由で

新入社員の内定取り消しを一方的に行うことはなかなかできません。

 

もし、一方的に内定取り消しを行い、争いごとになった場合は、

慰謝料の支払いや、本来その内定者が入社していたらもらえていたであろう

賃金の支払いなどの金銭的な問題が発生します。

 

また、「不当に内定取り消しした企業」とあらゆるところから情報が流れる

ことによって、企業の評判が落ちるなどの可能性もあるでしょう。

 最後に

 現在、新型コロナウイルスの影響によって企業の経営が急激に厳しくなり、

新入社員を受け入れることが厳しくなっている企業もたくさんあると思います。

 

もちろん、経営上どうしてもやむを得ない(あらゆる手を尽くしたが

このままでは倒産してしまう)ときは、内定取り消しの判断も必要に

なることもあると思います。それは仕方がないことです。

 

しかし、安易な内定取り消しは、後々大きなトラブルになりえます。

そしてそのダメージは結局企業に帰ってきますので、慎重な判断が

必要となります。

 

内定取り消しを考える前に、まず最初は内定者を入社できる方法がないかを

考えてみてはいかがでしょうか。

 

本日も最後までお読み頂き、ありがとうございました。