なにわの社労士べーやんの徒然日記

大手社労士事務所で修行中のべーやんが、日々の仕事や労働法に関するお役立ち情報、趣味などに関することを徒然なるままに綴ります

新型コロナウイルス感染症に伴う雇用調整助成金の特例措置について(長文です)

皆さんこんにちは、なにわの社労士べーやんです。

 

新型コロナウイルスの影響が日に日に日本全国で出ていますね。

私も仕事で顧問先からこのコロナウイルスに関する様々な相談を

連日山ほど受けています。

 

今回はこのコロナウイルスの影響で企業の売上に影響が出てしまい、従業員を

休業させることになった時に支給される助成金についてお話しさせて頂きます。

 

※令和2年3月8日現在、新型コロナウイルスに関する助成金は大きく分けて

 特例が2つ、新設が1つで合計3つあります。

 

 (特例・・・既存にある助成金の要件が緩和)

 ●雇用調整助成金

 ●時間外労働等改善助成金(テレワークコース、職場意識改善コース)

 

 (新設)

 ●小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援の助成金

 

本ブログでは、雇用調整助成金の特例について記載します。尚、新設である

休暇取得支援の助成金については、私の知り合いの社労士の増田先生が

分かりやすくまとめておられます。ぜひ以下のリンクよりご覧下さいませ。 ↓

 

「小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援の助成金」について | 「障害者の家族支援」専門 社労士・行政書士 増田繁男のブログ

 

そもそも雇用調整助成金とは

雇用調整助成金を受給するための主な要件は以下の通りです。

(要件の詳細は色々とありますが、主なものを記載します)

 

雇用保険の適用事業所(雇用保険に加入している事業主)

 

②売上高もしくは生産量などの指標が、最近3ヶ月の月平均が前年の同じ時期より

 10%以上減少している

 

雇用保険の被保険者と受け入れている派遣労働者雇用指標が最近3ヶ月の月平均が

 前年の同じ時期より以下の数字より増えていないこと

 中小企業は10%を超えてかつ4人以上  

 大企業は  5%を超えてかつ6人以上

 

上記①~③を満たし、他の詳細な要件をクリアした事業主が、事業活動の縮小

(例えば、事業所の一時的な閉鎖等)を余儀なくされた場合、自社で雇用する

労働者を何とか解雇などをせずに雇用を続けるために休業や教育訓練、出向等を

させる。

 

この助成金はそのような事業主に対し、その休業や教育訓練にかかる賃金の一部や

教育訓練の費用の一部が助成金として支給されます。

 

賃金の助成金額については、おおむね労働者に支払う賃金額の1/2

(中小企業については2/3)となります。

※正確な金額は別途計算方法がありますし、1人1日あたりの上限額は

 8,330円(令和2年3月時点)です。

 

また、この助成金の受給のためには、各労働者の休業予定を事前に計画届として

行政に提出し、その計画通り休業させた場合にしか助成金が受給されません。

※事後の変更は認められません。

 

今回の雇用調整助成金の特例の内容

上記の要件がある雇用調整助成金ですが、今回の新型コロナに関する

特例措置として、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主について

以下の要件が緩和されました(令和2年3月8日時点)

 

①上記②の売上等の指標が3ヶ月⇒1ヶ月に縮小

②上記③の雇用指標の要件が撤廃

 ※雇用保険被保険者や派遣労働者が増えていても助成金を受給できます。

③休業等の計画届の事後提出が可能

 ※令和2年5月31日までであれば、令和2年1月24日までさかのぼって

  計画届の事後提出が可能となります。

④特例の適用期間は令和2年1月24日~令和2年7月23日

 

 また、さらに今後、以下の要件が緩和される可能性があります。

(2020/3/11追記)

 令和2年3月10日付けで特例措置の追加がありました。

その内容については以下をご確認下さい。

 

【令和2年3月10日追加】新型コロナウイルス感染症に伴う雇用調整助成金の特例措置の追加について - なにわの社労士べーやんの徒然日記

 

 雇用保険被保険者として継続して雇用された期間が6ヶ月未満も対象

⇒現状では6ヶ月以上の従業員のみが対象です。

(2020/3/11追記) ⇒6ヶ月未満も対象となりました

●クーリング期間の撤廃

 ⇒現状では前回の支給対象期間の満了日から1年を経過しないと

  助成金対象にはなりません。 

(2020/3/11追記) ⇒クーリング期間が撤廃となりました

●緊急事態宣言が発令されている地域でのさらなる要件緩和

(2020/3/11追記) ⇒北海道に所在する事業所について更に

             要件が緩和されました。

 

 このようにコロナウイルス感染症に伴い、企業活動が縮小することが多く見込まれる

ため、そのような企業に向けて雇用調整助成金を支給できるように様々な要件が緩和

されています。

 

助成金受給にあたっての様々な注意点

 

助成金受給には時間がかかります。

  休業し、対象期間終了後2ヶ月以内に支給申請し、その後受給までに行政の

 審査期間がありますので、助成金を実際受給できるまでには休業開始から数ヶ月

 かかります。よってこの助成金だけが頼みの綱として企業活動を継続する企業に

 ついては受給までの期間が長いので厳しいかもしれません。

 

●受給には他にも様々なハードルがあります。

  例えば、休業もしているが、かたや時間外労働もさせている場合は、助成金

 金額が時間外労働をしている分だけ相殺の処理がされます。

  また、小売業、サービス業など、各人の勤務が不規則なシフト表などで決まって

 いる企業の場合、計画届の段階で各人のシフトに合わせた休業予定の提出が

 必要になるなど、様々な実務処理が煩雑になります。

 

助成金対象は雇用保険被保険者のみです。

  例えば飲食店などの場合、雇用保険被保険者は社員のみで、被保険者ではない

 アルバイトが多数だという事業所については、お店を一定期間お休みにして、

 アルバイトを含めた従業員を全員休業させて賃金を払ったとしても、助成金

 受給されるのは社員だけとなり、実際支払った賃金額に対して助成金の受給金額が

 少なくなります。

 

最後に

 

この助成金の相談はそこそこの数を受けています。しかしながら要件が緩和されて

いるとはいえ、受給までのハードルはなかなか高いように感じています。

 

しかしながら、コロナウイルス感染症の影響で明らかに企業の売上が下がってしまい、

その結果事業所の一時閉鎖などで労働者を休業させる必要が出てくる企業については、

助成金を企業資金の一部と考えて受給を検討してみることは大いにありだと

思います。

 

私も顧問先のために、できる限りお手伝いしたいなと思っています!

 

今回はかなりの長文となりましたが、最後までお読み頂き

ありがとうございました。